In-situ high-speed AFM of shape-controlled Pt nanoparticles in electrochemical environments:
Structural effects on the dissolution mechanism
Electrochemistry Communications 2016
要旨
白金ナノコロイドは電気分解反応を促進する機能をもつ。
そのため、燃料電池などの触媒として必要不可欠な物質であるが、白金ナノコロイドは高電圧が長時間かかると溶解し、電極にまとわりつくという欠点がある。従い、溶けにくい白金ナノコロイドを設計する研究が進められている。白金ナノコイドの解析には透過型電子顕微鏡(TEM)が一般的に用いられているが、TEMを用いた観察は試料を真空環境下に置く必要があるため、電気化学環境下での解析が不可能であるという欠点があった。
そこで本研究では、高速AFMと電解槽を組み合わせた装置である電気化学高速AFMを開発し、電気分解を繰り返した際に、白金ナノコロイドが溶けていく様子を直接観察した。
Keyword: 構造規制白金ナノコロイド
白金ナノコロイドは塩化白金酸アルカリ金属塩を還元することで得られる微粒子である。還元過程の条件によって原子配列を規制した、構造規制白金ナノコロイドを作製することができる。原料となる白金は埋蔵量の少ない希少金属であるため、資源保護の観点からも白金ナノコロイドの節約は大きな課題となっている。
観察結果
電気化学高速AFMはサンプルに電位をかけながら観察が可能な高速AFMであり、ステンレス製の観察プールにポテンショスタットが直接接続されている。電気分解に用いる電解溶液は0.1 M 過塩素酸水溶液、作用電極は金コートされた試料台上の白金ナノコロイド、対極はセル自身、参照極は可逆水素電極。白金ナノコロイドは形状の異なる3種類(正八面体、立方体、正四面体)を使用した。
電気化学高速AFMを用いて白金ナノコロイドを観察しながら、電気分解反応を最大で1000サイクル繰り返し、白金ナノコロイドが溶解してどの程度小さくなるかを評価した。
観察の結果、正八面体と立方体の白金ナノコロイドは電気分解経過後に高さが60%減少したのに対し、正四面体の白金ナノコロイドは高さが約40%しか減少しなかった。この結果から、正四面体の白金ナノコロイドは溶けにくく、触媒として優れた形状であることが示唆された。このように、電気化学反応下での直接観察を可能にする電気化学高速AFMは、触媒の構造設計に有用な手法であることが示された。
高速AFM観察画像
白金ナノコロイド溶解過程の経時観察像
a は立方体、b は正八面体、c は正四面体の白金ナノコロイドであり、
右の図は0~1000回の各電気分解サイクル数における白金ナノコロイドの
断面プロファイルを示す。
他の形状と比較して、正四面体 c の白金ナノコロイドは、粒子の高さ、
幅の減少度が他の形状よりも小さいことが示された。
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出典論文
Hoshi N., Nakamura M., Yoshida C., Yamada Y., Kameyama M. and Mizumoto Y.
In-situ high-speed AFM of shape-controlled Pt nanoparticles in electrochemical environments:
Structural effects on the dissolution mechanism,
Electrochemistry Communications, 2016, Volume 72,
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1388248116301916