Vol.010 鞭毛の安定化に寄与するタンパク質の機能解析

出典:Owa M., Uchihashi T., Yanagisawa H., Yamano T., Iguchi H., Fukuzawa H., Wakabayashi K., Ando T. and Kikkawa M. 
Inner lumen proteins stabilize doublet microtubules in cilia and flagella. Nat. Commun. 2019

要旨

鞭毛や繊毛は細胞の運動機能を担う重要な細胞小器官である。

鞭毛/繊毛のコア構造である軸糸は微小管二量体(DMTs)と中心微小管から構成される。
モータータンパク質であるダイニンの滑り運動によってDMTsが歪むことで、軸糸のしなり運動は生み出される。
そのしなり運動は軸糸本体にも大きな負荷となるが、軸糸は負荷への十分な耐久性を備えている。
この耐久性の獲得がどのようにして達成されているのかはこれまで明らかになっていなかった。

本研究では、高速AFMを「ナノ解剖器具」として用いた実験により、微小管に局在するタンパク質FAP45とFAP52がDMTsの安定化に寄与していることを示した。

Keyword: 軸糸(axoneme)

軸糸は9個の微小管二量体(DMTs)と2個の中心微小管からなる、9+2構造という特徴的な構造をもつ。

観察結果

野生型のDMTsと、いくつかの微小管局在タンパク質を持たないDMTs変異体をそれぞれ準備し、カンチレバーを突き刺して微小な傷をつけた。
その後、1~2 fpsで傷の様子を経時的に観察した。
その結果、野生型DMTsに比べて、FAP45とFAP52を欠失したDMTs変異体(fap45fap52)では傷の広がり方が早い様子が観察された。

このことから、FAP45とFAP52はDMTsを安定化させ、鞭毛や繊毛の耐久性を向上させていることが明らかになった。

高速AFM観察画像

 

DMTsに付けた傷の経時観察像

左は野生型、右はFAP45とFAP52を欠失させた変異体(fap45fap52)を示す。
野生型に比べ、変異体は傷の広がりが早い様子が観察された。

 

 

fap45fap52(FAP45とFAP52を欠失させた変異体)に付けた傷の経時観察像

 

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出典論文

Owa M, et al.
Inner lumen proteins stabilize doublet microtubules in cilia and flagella. 
Nat Commun. 2019 Mar 8;10(1):1143. doi: 10.1038/s41467-019-09051-x
https://www.nature.com/articles/s41467-019-09051-x

使用機種

サンプルスキャン型高速原子間力顕微鏡 SS-NEX

高速AFMのご紹介

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