Relaxation of Loaded ESCRT-III Spiral Springs Drives Membrane Deformation. Cell 2015
要旨
ESCRT-III(endosomal sorting complex required for transport complex III)は細胞膜の変形に関与するタンパク質複合体であり、生体内での細胞膜の変形を伴うあらゆる現象(細胞分裂、膜輸送、ウイルスの出芽など)に重要だと考えられている。
ESCRT-IIIが細胞膜を変形させるメカニズムを明らかにするため、筆者らは、ESCRT-Ⅲの構成要素の一つであるSnf7が脂質膜上でSnf7がどのように構造変化するかを観察した。
蛍光タイムラプス観察によって、脂質膜上のSnf7がパッチ状に分布していること、そして、新たに小さなパッチが出現して成長する様子が観察された。
さらに、電子顕微鏡とAFMを用いた静止画観察によって、蛍光観察でパッチ状に見えていたものはSnf7の渦巻き状の構造であることがわかった。
この二つの観察から、筆者らは渦巻き構造の新生と成長のモデルを立てた。
そして、構造と動きの両方を観察することができる高速AFMを用いて、渦巻き構造の新生・成長過程を動画で直接観察することに成功し、そのモデルの妥当性を示した。
観察結果
筆者らは、Snf7はすでに存在する渦巻き構造の端から新しい渦巻き構造が生まれ、それが切れることで増えていくというモデルを立てた。それを示すため、次の二つの実験を行った。
1. 高速AFMの測定時にSnf7に強い力を加えることで物理的に切断し、切られた後に渦巻き構造が増えるかを観察する。
2. 高速AFMを用いて渦巻き構造を動画観察し、すでに存在する渦巻き構造から新しいものが出現する様子を直接観察する。
1の実験の結果、力を加えた後、大きな渦巻きが減り小さな渦巻きが多数観察された。
これは、力によって切られた大きな渦巻き構造が、小さいものに分割されたことを示唆する。
さらに、2の実験の結果、すでに存在する渦巻き構造を起点に新たな渦巻き構造が生まれる様子が観察された。
これらの結果は、筆者らが立てたモデルの妥当性を強く支持した。
高速AFM観察画像
脂質膜上のSnf7の経時変化
渦巻き構造の末端(左図矢印)から、新しい渦巻き構造が形成された(中央図矢印)。
さらに時間が経過すると、新しく形成された渦巻き構造は元の渦巻き構造から切り離された(右図矢印)。
脂質膜上のSnf7の観察動画
すでに存在する渦巻き構造から新しい渦巻き構造が生成する。
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出典論文
N. Chiaruttini, L. Redondo-Morata, A. Colom, F.Humbert, M. Lenz, S. Scheuring, and A. Roux
Relaxation of Loaded ESCRT-III Spiral Springs Drives Membrane Deformation. Cell 2015
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26522593/