Vol.018 生細胞における単一インテグリンの動き、力の大きさ、力の向きのダイナミクスを報告するプログラム可能なDNA折り紙ナノスプリング

出典:Matsubara Hitomi, Fukunaga Hiroki, Saito Takahiro, Ikezaki Keigo, and Iwaki Mitsuhiro
A Programmable DNA Origami Nanospring That Reports Dynamics of Single Integrin Motion, Force Magnitude and Force Orientation in Living Cells
ACS Nano 25; 17(14): 13185-13194 (2023)

背景

 生物は、神経伝達物質のような化学分子や電気信号を用いることで、細胞間の情報伝達を行っている。近年、細胞内部では、様々な接着斑形成分子やアクトミオシンなどが動的に揺らいで自己集合と離散を繰り返しながら、インテグリンを介したノイズレベルの微小な力学信号を検知し情報伝達を行っていることが分かってきた。しかし、既存の計測技術では微小な力学を正確に評価することが困難であり、メカニズムを明らかにできなかった。

 この論文では、DNAオリガミを用いた4つの螺旋構造を持つDNAナノスプリング(コイル状バネ)を設計し、細胞とガラス基板の間に連結させて細胞への微小な力学を計測した。

Keyword: インテグリン

インテグリンとは、細胞表面に存在するたんぱく質で、細胞外のコラーゲンなどに結合することで力学情報を受信し、細胞内部に情報伝達を行う。


DNAオリガミ

DNAを材料にしてオリガミのように折りたたむことで、二次元、三次元のナノ構造物を思い通りに作り上げる技術。


接着斑形成分子

細胞は基質に接着する際、細胞の下部に焦点接着斑と呼ばれるたんぱく質の集合体構造が形成される。接着斑形成分子は、この集合体構造に関するたんぱく質分子群の総称のこと。

観察結果

この論文では、直径35nm、長さ200~700nmのDNAナノスプリング(コイル状バネ)を設計した。高速原子間力顕微鏡(HS-AFM)で、4つの螺旋構造(4Helix Bundle (HB))で構成されているDNAナノスプリングを確認することができた(下図)。

高速AFM観察画像

図a 4HBのDNAナノスプリング構造の設計

図b 4HBの円柱モデル

図c 4HBのDNAナノスプリングのAFM画像

関連するWebコンテンツのご紹介

下記リンクから動画等をご覧いただけます。
 

出典論文

Matsubara H., Fukunaga H, Saito T, Ikezaki K, Iwaki M
A Programmable DNA Origami Nanospring That Reports Dynamics of Single Integrin Motion, Force Magnitude and Force Orientation in Living Cells
ACS Nano. 2023 Jul 25; 17(14): 13185-13194

https://pubs.acs.org/doi/10.121/acsnano.2c12545#

 

使用機種

サンプルスキャン型高速原子間力顕微鏡 SS-NEX

高速AFMのご紹介

  YouTubeチャンネル|株式会社 生体分子計測研究所

CONTENTS